東京工業大学21世紀COEプログラム「インスティテューショナル技術経営学」
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あいさつ

インスティテューショナル技術経営学−日本型共進ダイナミズム

watanabe

日本経済の再生は、世界経済の活性化に不可欠であり、両者の好循環の構築が不可欠であります。そのトリガーは技術経営の再生にあり、それは、「技術の創造から事業化までのイノベーション創出サイクルの活性化は、(1)国家戦略・社会制度、(2)企業レベルでの組織文化、(3)時代背景といった3つの次元で象られるインスティテューションとの共進のダイナミズムに大きく依存する」との認識を基本とします。両者がうまく適合すれば、イノベーションも進み、同時にインスティテューションも進化発展し、両者の共進的発展の好循環が図られます。日本型技術経営のシステムは、本来的にこの面の卓越した機能を内包し、世界的モデルと注目されてきました。それが、20世紀末に、反面教師に急転したのは、時代背景が情報化社会、成熟経済にシフトしている中で、国家戦略・社会制度や、企業の組織文化の方は、工業化社会、成長経済時の成功の慣性に流され、共進的ダイナミズムに齟齬を来したことによると思われます。

本拠点は、以上の認識をベースに、この共進のダイナミズムを、解明し、可視化・操作化し、インスティテューションの異なる国でも適用可能な世界価値に昇華する新たな革新的な学術分野を構築することをねらいとします。このため、来年度設置予定のMOT大学院との連携の下、それを受け皿とする研究センターとして、「インスティテューショナル技術経営学」への革新を図る拠点を形成するものであります。

このような着想は、理工学分野のCOEを自負する東工大にあって、自然科学と社会科学とを融合させた社会理工学研究科を軸とする全学あげての学際的取り組みにより初めて可能となったものであります。中でも、経営工学専攻の、開発・生産面を軸としたオペレーションレベルから、順次、技術経済システム講座(1992-)の戦略・戦術レベルや、技術構造分析講座(1996-)の歴史的俯瞰の視点も内包しつつ、エンジニアリング知的財産講座(2002-)の知的財産管理をも包摂し、開発・生産・流通・消費・廃棄のサイクルの総合価値を工学的・システム的に研究・教育する58年の累積努力に負うものです。世界的に見ても、理工学分野の研究・教育を基盤に、戦略・戦術、オペレーション、歴史的俯瞰というインスティテューションの3軸に沿った3視点に立脚して、先の野心的命題に取り組む学術的研究・教育は本拠点をもって嚆矢とします。

拠点リーダー 社会理工学研究科 経営工学専攻 教授 渡辺千仭