カティンの森

アンジェイ・ワイダ監督の映画。2007年。ドイツのポーランド侵攻から第二次世界大戦がはじまって、さらにソ連のポーランド侵攻がはじまった9月17日から物語は始まる。ソ連軍に捕虜になったポーランド軍大尉の消息を訪ねて妻と娘がソ連側の占領地に入る。映画は、この家族が大尉と別れてなんとかクラクフに戻っての戦時中の生活とポーランド軍将校が虐殺されるまでの経緯、それにカティンの虐殺の実行犯をめぐっての戦後すぐのポーランドでの国内対立という三軸で展開する。虐殺はソ連の内務人民委員部が実行したが、その「機械的」な虐殺の場面が最後に出て来て圧倒された。
 ソ連は、カティンの虐殺はナチス・ドイツが実行したとし、ナチス・ドイツはソ連が実行したとして非難する。ともにポーランド支配のためのこの事件を利用しようとする。戦後のポーランドではカティンの虐殺はナチス・ドイツがやったことになっていて、そうだと認めることが国家への忠誠の証になっていたことがわかる。単なるドキュメンタリーでなく、映画としてのストーリーを作家・脚本家のアンジェイ・ムラルチクがワイダの依頼で書くことで、映画化できたとのこと。
岩波ホールで、2010年2月19日まで。