ラフマニノフ ある愛の調べ

2007年/ロシア/1時間36分
監督 パーヴェル・ルンギーン(Pavel Semenovich Lungin) 1949年生まれ。父親は脚本家・劇作家。当初は父親と同じく脚本家。1990年の「タクシー・ブルース」で監督デビュー。
出演:エヴゲーニー・ツィガノフ(セルゲイ・ラフマニノフ)、ヴィクトリア・トルストガーノヴァ(妻ナターシャ)、アレクセイ・コールトネフ(スタンウェイ)、アレクセイ・ペトレーンコ(ラフマニノフのピアノの師ズヴェーレフ)他

渋谷の文化村のル・シネマで見る。ロシアの有名な作曲家ラフマニノフ(1873-1943)の伝記的な映画。原題は「ライラックの小枝(Vetka sireni)」とあるようにライラックが映画では中心的な役割を果たしている。ロシアの初夏(5-6月)に白い花を咲かせ、そのころ中央ロシアではどこでも見られ、ロシアの夏を表しているような花。ラフマニノフとロシアとのつながりを象徴しているのだろう。ソ連以来の映画のよい伝統を引き継いでいる感じのする秀作。アメリカに亡命後の全米での演奏旅行を基軸に、回想的にロシア時代に戻り、幼い日々からロシア革命で出国するまでを見せて全体としてラフマニノフの生涯が伝わってくる。モスクワ音楽院の教授ズヴェーレフの家に寄宿してのピアニストとしての修業、幼なじみで従姉妹に当たるのち妻との出会い、交響曲第1番の失敗、精神病医による治療による回復とピアノ協奏曲第2番の完成とその成功などは伝記通り。マリアンナという革命家はフィクションだろう。しかし、正確な伝記的事実ではなくラフマニノフの人物像はよく伝わってくる。ラフマニノフにそっくりな主演男優エヴゲーニー・ツィガノフがよい。まだ27歳だが、9歳から俳優をやっているそうでじつにうまい。ロシア映画としてお勧め。
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