どん底

ゴリキーの「どん底」。ロシヤの木賃宿が舞台。底辺に沈んだ人々の人間模様。劇団東演という劇団による上演。モスクワのユーゴ・ザーパド劇場の演出家ベリャコーヴィチ(1950年生まれ)が演出。役者のうち二人がユーゴ・ザーパド劇場から来たロシア人の俳優だった。衣装もロシア人が担当しているそうだ。ロシア人の俳優の台詞はロシア語、しかし、相手の台詞の日本語を工夫してロシア人が何を言っているかわかるようにしている。舞台で皆が一斉に動く(木賃宿のベットを背をつけて回転するなど)演出は、モスクワのユーゴ・ザーパド劇場で見たのと同じ(ただ「どん底」は見ていない)。最後に演出者の一人が希望を語るところは(「くさい台詞」とも言える)、いかにもソ連の作家のゴーリキー風に感じたが、最後に「俳優」が自殺したことを、その「俳優」役の人自身が告げるところは、チエホフ風だ。演出はとても気に入った。