アジアン・カルチャー・ナイト - 2000年4月24日


先週、大学の私のオフィスに、一通の招待状が届きました。アジアン・カルチャー・ナイト、土曜日の夜7時より。 -- アジア文化の夕べ? その手紙によれば、これはライト州立大学の『アジアの遺産』月間の行事の一つだとのことでした。手紙をざっと読んで私は思いました。「きっとアトラクション付きの親睦パーティーかなんかみたいなもんだろう。知り合いをつくるには良いかも知れないな。」と言うわけで私はまだ明るい土曜日の夜大学へ出かけて行ったのでした。

キャンパスに着いて、招待状に書かれてあった"多目的ルーム"を探して -- 私はすぐに自分の勘違いに気が付きました。入り口に列をなしている人だかり。薄暗い室内には広大な観客席とステージ。山のような照明と音響機材。ステージ奥の大きなスクリーンには「アジアン・カルチャー・ナイト 2000 -- Back to the Future」の文字が映し出されています。そして始まったのはアジアの文化-- 歌、踊り、そしてファッション -- の一大イベントでした。

中国、韓国、日本、インド、タイ、ベトナム、パキスタン、フィリピンからの数え切れないほどのグループが次から次へとパフォーマンスを繰り広げます。その中にはもちろんこの大学の学生もいれば、デイトンの地域に住む人々、そして本職のアーティストも居ます。もう素晴らしいの一言です。2時間なんてあっという間に過ぎてしまいます。(私は自分のデジタルカメラを充電していなかったことを死ぬほど後悔しました。すぐに電池切れとなり、だましだまし使ったので全然うまく撮れていません。) 特に印象的だったのは、中国の万里の長城をモチーフにしたダンスを演じた中国人のダンサーでした。また私はこの日初めて、フィリピンの舞踏音楽がスペインの影響を強く受けている、というよりスペイン音楽そのものだということを知りました。

怒濤のようなパフォーマンスが終わり、ああ、これでおしまいかな、すごかったな、と思っったら、間髪入れずエッセイコンテストの表彰式が行われました。テーマは「アメリカは異なる文化や民族性を持った人々の存在からどのように自己を豊かにしてゆくことができるか」というものでした。(私はミノルタ社がこのようなコンテストを支援していることを知ってうれしく思いました。賞品としてミノルタのカメラやデジタルカメラが贈られていました。) そして、ショーはなんと「後半」へ突入したのです。そこから先はファッションショーでした。私はショーを通して、インドとパキスタンの2大勢力を肌で感じました。これからの時代、彼らが来ることを実感しました。そしてもう1か国、言うまでもないことですが、中国と。

中国の女性の華やかなチャイナドレスでファッションショーが幕を閉じたとき、時計はもうすぐ10時でした。「日本のものが少なかったなあ。」会場が景品の抽選会で盛り上がっている間、私はそんなことを考えていました。確かに一つ、日本人女性に率いられているダンスカンパニーの「ござ」を使ったダンスがありましたが、衣装も踊りも西洋のモダンダンスでした。ファッションショーでは日本の着物を着てでてきたのは女性一人だけ、しかも私の目には彼女は日本人でなくアメリカ人の学生に見えました。そんなところがちょっと残念だったなあ、と思っているうちに、司会者が今日のフィナーレをアナウンスしました。そして、またもや私は自分の勘違いを知らされました。

4人のダンサーのチーム -- おそらく前半に「ござ」ダンスを演じたダンスカンパニー -- が、源氏物語を題材にした一連の-- 序章から初めて4場くらいの構成の -- ダンスを演じ始めたのでした。それは素晴らしいものでした。全てが「日本」でした。踊りは別に日本舞踊ではありませんし、衣装も着物そのものではありません。音楽も雅楽に似せていますがおそらくシンセサイザーでしょう。にもかかわらず、すべてから日本が、あるいは中世の宮廷の世界が感じられるのです。そして、光源氏を演じた白人男性の、本当に背筋の伸びた凛々しくかつ優雅な演技!本当に高度に芸術的な演目でした。ただ、惜しむらくは、このパフォーマンスのスタートが既に10時を回っていて、観客の半分くらい(特に子供連れ)が帰ってしまっていたことでした。そして、踊りは本当に優雅なものだったので、もしかするとラップやストリートの速いダンスに慣れているアメリカ人にはほとんど動いてないようにしか見えなかったのでは、などと余計な心配もしてしまいました。でもそんな心配をするくらい、芸術的なものでした。

こうしてすべてを見終えて、私はこのイベントに本当に感銘を受けました。と同時にこの体験は2つほど疑問も残してくれました。

1つはやはり、日本人の学生はどうしちゃったのかなあ、という点。(例のダンスカンパニーのリーダー、サエコ・イチノエは確か本職です。) このライト州立大学にも日本人学生はいるはずなのですが。彼らは日本人であることとか、日本のこととかに興味が無いのかな?それとも他のことで忙しいのかな?と。もちろん過度のナショナリズムは望ましくないこととか、今や日本人ではなくて地球市民の時代だ、というようなことも承知はしていますが、私は、私の年代を含めて日本の若い世代が日本人としてのアイデンティティをかなりマイナスに思っているようで気になっていました。(ここライト州立大学の学生がそうだと言っているわけではありません。あくまで日本での一般論で。)私は彼らにナショナリズムを説くつもりは毛頭ありませんし、そうしたくもありません。ただ今の日本社会の何が彼らにそうさせているのかということがずっと気になっていました。

もう一つは、もしこういったイベントが、東京の私の大学で行われたらどうなるだろう、という点。うちの大学にも留学生、特にアジアの学生はたくさんいます。彼らはこのようなイベントを既にやっているのかな?私は大学祭で展示をしたり屋台で食べ物を売ったりくらいしか知らないのですが。うちの大学はこういった活動をしようとする学生を支援する体制を持っているのでしょうか?もしこのようなイベントが開催にこぎつけたとして、皆-- 他の学生、教官や職員、そして地域社会の住民 -- は興味を示すでしょうか?アジア以外の国だったら?私達の隣国やその他の国を理解するために、まだできることはあるような気がします。アメリカなど大国の方を向いているばかりでなく。

なにはともあれこの素晴らしいイベントを成功させたらライト州立大学のアジア/ヒスパニック/ネイティブアメリカンセンターに敬意を表します。

Chinese Dance 1 Indian Dance 1

Chinese Dance 2Indian Dance 2


「デイトン日記」の目次に戻る


Hiroyuki Umemuro
Copyright 2000 Hiroyuki Umemuro all rights reserved.