もしも鹿と衝突したら - 2000年6月16日


4月13日の日記にも書いた様に私はオハイオ州の運転免許証を取らなくてはなりませんでした。そこで、こちらの交通法規を勉強し、筆記試験と実技試験とを受け、無事運転免許証を取得することが出来ました。日本よりもずっと簡単です。 日本が公道に出る前に運転技能を完成させなければならないという考え方なのに対し、アメリカではある程度の知識と技能があったら後は自分で運転しているうちに上達するだろうという考え方の違いがあるのでしょう。ここでは車は必需品ですから、成人は(特に理由の無い限り)ほとんど皆運転免許を持っているものとされているようです。 その意味で運転免許を取ったことで、私は身分証明書としてパスポートを持ち歩かなくても良くなり、大変助かっています。例えばビールやワインを買うときなど写真付きの身分証明書の提示を求められますが、たいていは運転免許証を見せることを期待されているようです。そして、運転免許証はパスポートよりも小さくて持ち運びに便利ですし。(そして驚いたことに筆記試験は日本語でも受けられるそうです!)

さてオハイオの交通法規を勉強していたとき、私は「オハイオ州交通法規の概要」というような無料の小冊子を手に入れてそれを読んでいました。小冊子は大体90ページくらいで、運転免許の取得方法から始まって様々な状況でどのように運転すべきか、交通標識、罰則規定などについて説明されています。そして、表紙をめくって一番最初のページには、2つの重要な項目についての説明が書いてありました。そのうち一つは「事故に遭ったとき何をすべきか」ですが、もう一つは「鹿と衝突したとき何をすべきか」です。

「事故に遭ったとき」の節には、警察へ連絡や、事故の状況、車のナンバープレート、人の住所と名前などを記録することなど、事故の際にしなくてはならないことが書かれています。ですから私は次の「鹿」の節にもその様なこと、すなわち車に起こりうる故障や損傷について調べたり、応急処置をしたりすることが書かれているのだと思いました。こちらの鹿は日本の(例えば奈良公園にいる)鹿よりもずっと大きいことがあり、そんな鹿にぶつかったら車は深刻な損傷を受けるに違いありません。ところが、「鹿と衝突したとき」の節は次の様に続くのでした。「鹿と衝突して轢き殺したら、その件を狩猟保護官(game protector) あるいは他の法執行官に報告することにより、合法的にその鹿を所有することができます。執行官はその件について調査し、あなたが合法的に死体を所有することを認める証明書を発行します。報告なしに死体を持ち去ることは違法です。」... 私は改めてアメリカ人は基本的に狩猟民族なのだなあと思いました。

日本では高速道路の横にはほとんどの場合壁(フェンス)が設置されています。しかしここでは他の公道と同様、高速道路の横には何もありません。たまにガードレールがあるくらいで、周囲に広がる緑地や森と地続きです。よって動物たちにとって(そして人間にとっても)高速道路の中に入ってくるのはいとも簡単なことのように見えます。実際の所、私がアパートから大学にドライブする間の高速道路には毎日動物の死体があります。たかだか数キロの道のりなのですが、少なくとも2,3匹は必ず居ます。

日本に居た間は、道ばたで動物が死んでいるのを見るたびに、我々の交通の利便性のために犠牲になった彼らのために心の中で祈ったりもしていました。しかしここでは多すぎます。アメリカ人にとっては動物が死んでいることは極あたりまえのことなのかなあ、と思ってしまいます。そしてもしも私も同じように「慣れて」しまったら、悲しいことだな、と。あとは人々が他の人々の死に「慣れて」しまうことが無いことを祈るばかりです。


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Hiroyuki Umemuro
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