デイトンの夏は日本に比べれば(今のところ)大変過ごしやすいので、自宅のアパートには最初から冷暖両用のエアコンが付いていましたが、あまり冷房に使う必要を感じませんでした(来た当初は夜暖房に使っていましたが)。しかしさすがに夏も盛り、特に日中はたまに暑い日もあるので、先日冷房を動かしてみました。
ところが思ったほど冷えません。まあ、通風口から風が出ているので、マイルドではあるけれども多少は冷えているのかなあと思って数日間過ごしてみました。しかし、だいたいアメリカではどこへ行っても -- ショッピングモールに行ってもカフェに行っても大学に行っても -- いやというほど冷房を効かせています。私などは長袖を着ないで長時間店にいると風邪を引いてしまうほど。それほど冷房の好きなアメリカ人の国にあってこの程度ではちょっとおかしい。というわけで暇を見つけてアパートの管理事務所に行ってみました。
すると平気な顔をして「ああ、ガスの充填が必要なのね。今日やっとくわね。」それで終わりです。その日夕方帰って「日中作業のためにおじゃましました」という札がかかった私の部屋のドアを開けてみると、ご丁寧にエアコンが点けっぱなしで、私の部屋は「これでもか」と言うほど冷やしされていました。電気代は私が払っているのに!それはともかくその時思ったのは、この国では、客からクレームが来ない限りは「問題」では無いんだな、ということでした。
これに似たことでもう一つ思い出されるのは「掃除機とアイロン」事件です。私はこの一年間の滞在中の、アパートで使う家具や食器など家財道具をほとんどレンタル家具業者から借りているのですが、そのとき家電製品として掃除機とアイロンも借りました。まあレンタルですからよほどタイミングが良くない限り新品にあたることは無いとは思いますが、来たものがまたひどかった。アイロンはいわゆるスチーム、すなわち水を入れて蒸気を出すタイプですが、アイロンをかけてると尻から熱湯が垂れてくるのです。掃除機は日本と違って、吸込口の部分にモーターからゴミバッグまで全て一体になっていて、そこから上に延びているプラスチックのパイプで押して歩く形なのですが、パイプの途中の継ぎ手の部分のねじが無くなったのでしょう。適当な木ねじがあなに差し込んであって、そのまわりにガムテープが巻いてあります。ねじは穴に全然合っていないのでパイプは押したり引いたりするたびにガクガクし、すぐにテープが破れて木ねじがはずれてしまいます。アイロンは足にかからないように注意し、掃除機は日曜大工センターでボルトナットを何種類か買ってきて応急処置をしてしばらく使っていたのですが、いい加減いやになって、言うだけ言ってみようと思って「こういう訳で不具合があるから換えてくれないか」と言ってみました。
すると2日くらいで代替品がきました。掃除機は、問題の箇所は壊れてなく、スマートなプラスチックの部品できちんと留めてありました。が、今度は驚いたことに、ゴミを貯める紙バッグが満タンの状態で納品されてきたのです。いったいどこの家で吸い込んだゴミをそのまま持ってきたのでしょうか。あるいは文句を言ったのでいやがらせのつもり?そんなことまで考えてしまいました。でもいい加減文句を言うのも面倒くさくなったので、まずは紙バッグを交換し、交換の時にこぼれたゴミを吸い取るのがその掃除機の我が家での初仕事になりました。(一方アイロンは新品になりましたが)
この家具レンタル屋は、うちのアパートの管理事務所と契約しているところなので、たまたま悪いところと当たったのかも知れません。しかし、日本ではこんな商売をしていたらきっと長続きしないでしょう。全てがそうだとは言い切れませんが、日本のサービスにしろ製品にしろ、顧客が不快・不満な思いをしないようにと十分な心配りがされているのが普通だと思います。もちろんそれを提供する全てのサービスや商品に徹底するのは手間とコストのかかることです。一方、苦情が来たらそのときに対応・解決すればいいというやり方は、確かに余計なコストはかからないかも知れません。どちらが「良い」方法かというのは一概には言えないかも知れませんが、一つだけ言えるのは、そう言った手間があらかじめたっぷりかけられたものと、文句を言った人にだけ対処すればよいというものとは、単に表面的な形や価格だけではない、背後に存在する価値が全く違うのであり、単純には比べられないということです。
「お客様の身になった気配り」というのは日本人の得意とするところの一つだったように思います。特に個人向けのこのようなサービス業においては、日本企業が国際的な競争を勝ち抜く強みになるような気がします。そのためには、まず我ら日本人がそういう精神を大切に、失わないように心がけて行かないと。