Dayton Diary

ベースジャンプ - 2000年8月29日


今夜、遅い夕食をとりながらテレビを見ていると(え?行儀が悪いですか?それはひとまず置いておいて...)、ニュース番組でベースジャンプ(base jumping; 日本では既に別の訳語があるかも知れませんが) の特集をやっていました。スカイダイビングに似た"スポーツ"でパラシュートを背負って飛び降りるのですが、スカイダイビングと違う点は飛行機の上からではなく、地上にある高い場所 -- ビル、塔、崖など -- から地上に飛び降りるという点です。番組の中では 007 の映画の一つの中でジェームス・ボンドが危機から逃れるために高い鉄塔の上からパラシュートを背負って飛び降りるシーンも紹介していました。番組によればベースジャンプは、スカイダイビングよりも地上に着くまでの時間がずっと短いため(そして予備のパラシュートを持っていない、というより持っていても使う時間的余裕がないため)、はるかに危険であるということでした。そしてベースジャンプは危険であるばかりでなく、違法であることが多いとも説明されていました。ほとんどの高層建築では屋上へ自由に上がることは出来ません。それに場所によってはベースジャンプ自体を明確に禁止しています。

番組の中でカリフォルニア州にあるヨセミテ (Yosemite) 国立公園のエピソードが紹介されていました。ヨセミテは、巨大な一枚岩エル・キャピタンを始め美しくかつ見事な崖や岩山の宝庫ですから、ベースジャンパー達はヨセミテの断崖から飛ぶことをずっと望んできました。しかし公園はベースジャンプを禁止しています。ある日、弁護士を含む4人のジャンパー達が、ヨセミテでベースジャンプをする権利を主張して、違法であることを承知の上でベースジャンプのデモンストレーションを強行しました。そして結果は... 3人目の女性ジャンパーが飛んだ時パラシュートが開かず、そのまま落下して死亡するという結末を迎えました。番組の中で彼女の夫がその一部始終を撮影したビデオテープが放送されていました。最後の4人目のジャンパーはその日ジャンプを中止し、そしてヨセミテ国立公園では現在もなおベースジャンプは違法とされています。

私はベースジャンプそのものについては何も言うことはありません。それはおそらく本当に「すごい」スポーツで、きっと人生を変えてしまうような経験でしょうし、それだけのリスクを取るだけの価値のあるものでしょう、きっと。(私自身はやろうとは思いませんが。) それよりも私が今夜の特集を聞いていて驚いたのは、ジャンパー達が「自分たちは納税者であり、ヨセミテは国立公園なのだから自分たちはそこでジャンプをする権利がある」と主張したという点でした。もちろん、アメリカの国民がよく、自分たちは納税者だから政府から質の高いサービスを受ける権利があると主張することは知っています。(そして大抵私はその考えに賛成します。) しかし、仮にベースジャンパーが自分たちのリスクで崖から自分たちの身を投げる権利を有していたとしても、彼らには、公園にいる他の人々に、生命の危険が生じるかもしれないというリスクを押しつける権利まではありえません。それは明らかです。番組によれば、ベースジャンプの場合パラシュートの特性と落下時間の短さのため、決められた場所に着地するのは困難とのことです。パラシュートを使ったとしても着地の時はある程度の速度で落ちてきますから、公園内を歩いている人は「上からの衝突事故」に巻き込まれる可能性ができることになります。あるいはベースジャンプをやっている付近(往々にして見事な景色の所だと思いますが)への立ち入りを制限するしかないでしょう。もちろん例えば南極大陸の様に、地上で人と出くわす可能性がほとんどゼロの場所でやる分には何も問題ありません。しかしどうしてヨセミテで -- 世界中から何万人もの人がやってきてハイキングをしたり、自転車に乗ったり、泳いだりしている場所で -- それが出来ると思えるのでしょうか。(さらにジャンパーには周辺の自然環境を破壊し動植物を傷つけるというリスクもあります。)

自由なことを行う権利が正当化されるのは、他の人々が自由なことを行う権利を侵害しない範囲において、です。なぜアメリカで -- これだけ長い間個人の権利が議論されてきた国で -- こんな幼稚な主張をする人がいるの不思議でなりません。

ヨセミテ国立公園の絶壁


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Hiroyuki Umemuro
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