誰の音楽? - 2000年9月15日


先週の土曜日はジョン・フラック先生に誘われて、ブルースフェスティバルに出かけてきました。フェスティバルはデイトンの東隣にある小さくてきれいな街イエロースプリングス(Yellow Springs)で数日にわたって行われており、その日は街の大学のキャンパスの中にある野外講堂で、十数バンドが参加するコンサートが行われていました。コンサートはキャンパスの緑がきれいな昼下がりから、月と星がきれいに見える真夜中まで続きました。会場の回りにはいくつもの露店が店を出していてホットドッグやポテトフライやアイスクリーム、バーベキュー、レモネードを売っているし、一角にはビアガーデン(本当に柵に囲まれた芝生の「庭」の中でみんなビールを飲んでいます。これは年齢チェックを厳しくしているためで、詳しくは後で。)まであって、地元のビール会社のビールを何種類も売っています。コンサート会場の入場料は寄付制で、「目安」として書かれた6ドルを払うと手に赤いマジックで印を描いてくれ、食事に行ったりトイレに行ったりした後は入り口でその印を見せると自由に再入場できるという仕組みです。ビアガーデンではまた別の印をくれます。アメリカは未成年の飲酒に非常に厳しく、このビアガーデンに入るにも写真付き身分証明書の提示を求められます(もっとも、ジョンと私は明らかに21歳以上に見えるのでしょう、見せろとは言われませんでしたが)。そして一度入場が認められると、プラスチックの腕輪を手首に巻いてもらいます。これは一度はめると、はさみで切らない限りはずせない、つまり他の人へ譲ることができない仕組みです。そして我々は、会場に着いて間もなく、その日そこで重要と思われる2つの"通行証"を無事手に入れました。

私達が5時過ぎに会場に着いたとき、コンサートでは割と年輩のブルースマンが歌っていました。(彼がブルースハープ(ハーモニカ)を自分で吹きながらそれだけをバックに歌う曲はとても感情的で文字通り魂を揺さぶられるような歌でした。) その次に出てきた若いトリオはどうやらジョンのお気に入りの様で、地元の高校を出たばかりだけどとてもうまいということです。彼らが演奏を始めると、彼らにとても才能があることは私にもすぐにわかりました。今まで私はあまりブルースには詳しくなく、とても感情を込めた音楽だと言うことは知っていましたが、一方でコード進行などいくつか定型的なパターンがあって、あまりバリエーションをつけられない音楽だと思っていました。しかし、この若い3人組のバンドは実にさまざまなチャレンジを見せてくれて、さらに音楽自体もとても良く、とても楽しませてくれました。このバンドの時は聴衆もかなり集まっており、彼らは若くて早めの順番にされたのだろうけども、フェスティバルの中でもおそらく一番盛り上がったコンサートになったと思っていました。この時は。

ジョンと私が外でチーズステーキとビールで簡単な夕食を済ませて会場に戻ってきた頃には、日も暮れて暗くなり始めていました。バンドが交代する間の休憩時間で、ステージの前の開けた場所に子供達が降りていって、思い思いに遊んだり、テープで流されていた音楽に合わせて踊ったりしていました。そして次のバンドが演奏を始めると、今度は数人の大人達がステージ前に降りていって、カップルで踊り始めました。ちょうどアメリカ映画のダンスパーティーの様に。シカゴから来たバンドが登場し、ニューヨークから来たバンドが登場し、彼らがお得意のブルースばかりでなく、有名なレッドツェッペリンやピーターガブリエルやティナターナーのヒット曲を演奏し始めると、ステージ前にはどんどん人が詰めかけていって、最後にはほとんど身動きがとれない(?)ほどになり、最後のバンドが夜中の1時にステージを終えるまで踊り続けていました。本当に皆楽しそうで、それはコンサートというより"お祭り"でした。

真夜中デイトンへの帰り道、まだ楽しかった時間の余韻に浸りながら、それでも私は1つのことを思っていました。あんなにたくさんのバンドが、有名なロックの曲を演奏するとは思わなかったな、と。もちろん私はブルースにはそれほど詳しくありませんが、今夜出てきたバンドがかなりうまいバンドぞろいだったことははっきりわかりました。だから他人のヒット曲のコピーじゃなくて、彼ら自身のブルースをもっと聴いてみたかったなあと思っていたのです。彼ら自身は自分の音楽で十分勝負できるだけの実力をもっているのですから。で、私は車の中でジョンにそう話してみました。すると、ジョンは「ああ、だって楽しいじゃないか。これはコンテストじゃないんだから。みんなが好きな音楽を演って、みんな楽しい、それでいいんじゃない?」 ... うーむ、日本人は「持ち唄」というようなことにこだわりすぎるのかも知れませんね(もしかして私だけですか?)。日本であまり有名じゃない歌手なりバンドなりが公演で有名な人の曲を歌うと、お客さんは喜ぶかもしれませんが、一方で自分の「持ち唄」だけで勝負できない人、という評価を受けたりしませんか? 一方この国では、バンドはお客さんの喜ぶ曲を演奏し、お客さんは踊り、みんなで大いに楽しみます。我々(私)に不足しているのは、もっと「楽しむ」という精神なのかも知れませんね。

ブルースフェスティバル:昼間ブルースフェスティバル:夜遅く


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Hiroyuki Umemuro
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