空の上にいる時間 vs 地上にいる時間 - 2000年9月21日


先日「サンディエゴ日記」を書いてから、何人かの方からこんな感じのお便りを頂きました。「アメリカに居るといろいろな所に簡単に行けていいね。国内旅行だから手軽だよね。」うーん、確かにそう...かも知れませんが... ただちょっとだけ、それほどでもないんですよというお話を書いてみることにしました。

デイトンは、ご存じかも知れませんがアメリカのいわゆる「中西部」、つまりアメリカ本土の中心より少し東の部分にあります(それでもなぜか中『西』部なのですが)。飛行機で西海岸のサンディエゴへは通常、一回の乗り継ぎを挟んで全部で3,400km くらいの行程です。ピンとこないかも知れませんが、成田から香港やフィリピンのマニラが大体2,900kmです。グアムは2,400km、サイパンが2,300km、北京が 2,100km、ソウルに至ってはたった 1,200kmです。「国内旅行」と言っても今回のサンディエゴ行きは距離からすれば日本から外国に行くよりもずっと長距離です。それでも国内旅行だから煩わしいことはないでしょ、と思われるかも知れません。確かに、パスポートは持ち歩く必要はありませんね。でも、一方で国内であろうと飛行機に乗るときには必ず写真付きの身分証明書を提示するように求められますから、その類のものを何かしら持ち歩かなくてはなりません。たとえば運転免許証とか、あるいは、パスポートとか。違いはパスポート検査の列に並ぶか並ばないかくらいですね。

そして私が今回の旅行がそれほど手軽だと思えなかった理由がもう一つあります。アメリカの全国紙 USA トゥディ(USA Today) によれば、今年の7月は国内の航空路線の遅れが史上三番目に悪かった月だそうです。私は今回デイトンに来る前にも何回かアメリカに来たことがありますが、旅行日程を変更しなくてはならないほどひどい遅れなどのトラブルに会ったことはありませんでした。しかし、今ははっきり言います。「この夏は本当にひどかった」と。3時間4時間の遅れやキャンセルには何度も会いました。ある時はもう飛行機に乗って滑走路まで移動していたのに途中からターミナルに引き返して降ろされ、再度出発するまでに2時間待たされたこともありました。またある時は、3時の予定の飛行機がキャンセルされ、しかたなく7時の飛行機まで4時間待っていてまたキャンセルされ、次の朝の飛行機に振り替えたらまた翌朝キャンセルされました。しかも両方とも特別な状況 -- 例えば嵐が来ているとか竜巻が起こっているとかテロがあったとかサミットがあったとか -- ではなく、ごくごく普通の曇りの日でした。そして今回のサンディエゴ行きでは、私は最初シカゴで乗り換えて行く予定だったのですが、またしてもデイトン = シカゴ間の便がキャンセルされ、結局一度東部のワシントンDCに行き、それから西海岸のサンディエゴにとって返すという羽目になりました。と言うわけでこの片道の飛行距離は通算で約4,500km になり、ほとんど東京からタイのバンコクまでの距離に匹敵する長い旅程となりました。帰りは帰りでまたシカゴ = デイトン間がキャンセルされ、次の便までシカゴの空港で2時間待ったあげく、さらにその便が1時間半ほど遅れたおかげで、結局家に帰り着いたのは午前1時を回ってからでした。

写真は空港のターミナルで飛行機を待っているところです。しかし驚くべきことにこういう状況に於いても多くのアメリカ人は、ただただ何時間でも自分たちの飛行機を待っています。家族や同僚に電話で連絡をしたりするくらいで。おそらく日本で何時間も遅れてしかも出発が何時になるかわからないなどと言ったら、カウンターに詰め寄って航空会社の社員に文句を言う人が何人もいるでしょう。アメリカ人の方が寛容で忍耐強いという見方もできますが、一方でアメリカでは、もう航空会社のこの程度のサービス水準に皆慣れっこになってしまっているという見方もできます。「まあ良くあることだ」と。

空港のターミナルで飛行機を待つ人々

追記:この日記を書き上げた後、ユナイテッド航空のCEO(最高経営責任者)から、この夏の「異常な」運航のキャンセルと遅れについてのお詫びの手紙が家に届きました。


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Hiroyuki Umemuro
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