秋学期の終わり - 2000年11月21日


前回「結果はもうまもなく明らかになるのですが...」と書いたアメリカ大統領選挙の結果が2週間経った今でも結果が分からないという異常事態のまま、それでもアメリカは例年通りサンクスギビング(Thanksgiving Day; 感謝祭)の休日を迎えます。この祝日(11月の第4木曜日)は全米の公の機関は勿論、年中無休のスーパーや美術館・博物館の類もこの日だけはほとんど閉じてしまい、町中がひっそりとしてちょうど日本の元日のようになります。そしてみな家族と一緒に家に居て七面鳥料理やパンプキンパイを食べて過ごすのが習慣だそうです。クリスマスは毎年曜日が変わるのに対し、サンクスギビングの日は必ず木曜日なので、金曜日を休暇にすれば毎年4連休があることになり、仕事を持つ人は「クリスマスはなかなか帰省出来ないけど、サンクスギビングの時には必ず家族が集まれて良い」と言う人も多いようです。そしてみなサンクスギビングで一息つくと、年末のクリスマスまであとひと月、人々は休暇を楽しみにしながら今年の仕事の仕上げにかかります。

うちの大学(Wright State University)も今日(11月21日)で秋学期(fall quarter)の授業は終わり。そしてサンクスギビングの休日(木曜日から日曜日)が明けて来週一週間が期末試験(final exam)の期間になり、12月に入ると同時に冬休みとなります。早めに冬休みが始まる代わりに冬学期(winter quarter)の始まりは早く、1月2日から授業が始まります。デイトンでは気温が0°C(32°F)より上がらない日が多くなり外を歩くのがつらくなって来たので、冬休みに入る時期としてはとても良いと思うのですが、でも真冬の1月にまたみんな戻って来るんだよなあ、と思うとちょっと厳しいなと寒がりの私は思ってしまいます。

さて私はアメリカに来て以来、春学期(4月〜6月)、夏学期(7月〜8月)、秋学期(9月〜11月)と3学期を過ごしましたが、そのうちサンディエゴ(San Diego) に出かけた夏学期を除いた春学期と秋学期の間、心理学科の大学院の授業に紛れ込ませてもらいました。ジョン・フラック先生を含む3人の先生方の授業それぞれ1つずつ。そして今秋学期が終わり私の3つ目の授業も今日終了しましたが、実に良い経験をしたと思います。もちろん授業の内容が自分の勉強になるというのもありますが、大学院の授業のやり方という点で、今まで私が日本の大学で経験してきた大学院の授業といろいろな点で異なり、帰国後の授業を考える上で大変参考になりました。

面白いのは3人の先生が3人ともかなり異なるスタイルの授業をしていたと言うことです。勿論先生方の個性もあるでしょうが、さらに先生方が大学院生の時に教わった「師匠」にあたる先生方の教え方まで透けて見えるようで大変興味深かったです。そして、それでも3つの授業全てに共通していた点が2つあります。第一点は授業の中で大学院生が実に活発に発言することです。時には先生の話している内容に対して質問はあたりまえ、「それは違うと思う」と自分の意見を述べ、本題そっちのけで議論になったり、先生も話したい、大学院生も話したいということで「発言権」を巡って割り込み合戦になったりします。この背景には、大学院生個人個人がその授業を通じて何を身につけたいかという目的を明確に持っていること、学生が自分の意見を持ち、それを表現し、批判に対して反論(defence)するやり方を身につけていること、そして何より心理学を学ぶ者として物事を批判的に見る科学の精神が尊重されているということが土台になっていると思います。

そして第二の共通点は毎回の授業でかなりの量の文献講読(reading assignment)が課せられることです。心理学の論文は20〜30ページあるのは珍しくありませんが、それらを毎回平均2本くらい、または本の50ページ以上ある章を毎回授業までに読んでくる様指定され、しかも授業は週に2回あります。授業では文献は読んできたものとしてそれを前提に進みますから、読んでこなければまったくついていけません。秋学期には2つの授業に出てみましたが、毎日家に帰ってから深夜まで論文を読まなくてはとてもこなせません。こうしてみな予習して来るから授業中に活発に議論ができるし、また学生はある分野の重要な文献を集中して読むことによりその分野の研究がどのように発展してきたかについて十分な知識を得、さらに大量の文献を読むという研究者として重要な能力も身につけるのです。

というわけで今、最後の冬学期(1月〜3月)をどうしようかと考えています。彼らの授業は大変勉強になる反面、予習にそれなりの時間を割かなければ自分の身に付かないので。帰国間際でもあることだし... まあ年明けまで考えようと思っていますが、やはり数を絞ってでも出たいと思います。彼らの授業はそれくらい刺激的・魅力的です。それに「秋学期はああいう授業をしたけど、冬学期はまた違うスタイルでやるよ」などと嬉しくなるようなことを言う先生もいるので。


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Hiroyuki Umemuro
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