昨日学科の建物の廊下を歩いていると、ジョン・フラック(John Flach)教授が、手に何か黒い衣装を持って歩いています。つかまえて何かと訪ねたら、翌日(つまり今日)学位授与式があって、研究室からひとり博士号(Ph.D.)を受ける学生が出るので着るのだと言いました。かねてからアメリカの大学の卒業式に興味のあった私はさっそく観客として出席することにしました。
日本の方はもしかすると、この時期に卒業式?と不思議に思われるかも知れません。日本では一般に卒業式は年に一回、学年の終わり(日本では3月)にやるものと考えられていると思います。もしアメリカの学校年度がたいてい9月から始まるということを知っていたとしても、卒業式シーズンは5月か6月ということになりますよね。ここライト州立大学(Write State University)では、年に2回、6月と12月に学位授与式が行われます。意外と多くの学生が6月以外の季節に卒業するためです。(そして東京工業大学でも9月に卒業する学生も居ます。)
学位授与式は今日の午前中、キャンパス内のスタジアムであるナターセンター(E.J. Nutter Center)で行われました。フラック教授と、本日博士号を受ける学生のマットは 8:30 から学長主催の朝食会に招かれていて、式は確か9時から10時の間のどこかで始まると思うよ、と言われていたので、私は9時過ぎにナターセンターに車で乗りつけました。私が到着したときにはもうたくさんの車が、駐車場に入るために列を作っていました。会場では、私は幸いにして比較的前の方の席に座ることができましたが、すぐに観客席は卒業生の家族や友人でいっぱいになってしまいました。たまたま私の隣の席に座ったトムという男性は、今日奥さんが修士の学位を受けるそうですが、いろいろとアメリカ流の式の慣習(例えばエルガー(Elger)作曲の威風堂々(Pomp and Circumstances)第一番は伝統的に高校や大学の卒業式の入場音楽に使われるんだ、とか)を教えてくれたのでいろいろと勉強になりました。
間もなくその威風堂々に乗って学長を先頭に教官が入場し、続いて卒業生が会場の数カ所から列になって入場、全員が起立してアメリカ国歌 (National Anthem) を斉唱すると、式が始まります。式の中で一番印象的だった点は、卒業生は勿論、参列している教官が全員角帽(mortarboard)とローブ (robe) をまとっていることでした。教官のほとんどのローブには、袖に博士号を示す3本のストライプがあり、さらにどこの学校から学位を受けたかによって色もデザインも違います。ですから様々な大学で学位をとった教官が集まっている教官席はとてもカラフルに見えます。今日の学位授与式には博士号を受ける学生は2人しか居ませんでしたが、2番目に受けたマットもローブに身を包んで壇上の学部長の前に進みます。そしてその後に、指導教官であるフラック教授、そしてニュージーランドの大学の教授であるマットの父親がやはりそれぞれのデザインのローブに身を包んで続きます。そして二人に付き従われながら学位を受け取る様子は、とても厳かで感動的ですらありました。私はフラック教授のローブ姿を初めてみましたが、今までのどんな姿よりも尊厳のある素晴らしい姿に見えました。日本の卒業式を見て「私もあんな風にいつの日か学位をとりたい」などと思ったことは一度もありませんが、今日の式典は思わず私もあのローブに身を包んでみたいと思わせるのに十分な、感動的なものでいた。
学位授与が学部生に移るにつれ、雰囲気は明るくにぎやかなものに変わって行きました。学生は歩きながら観客席に手を振り、観客席ではみな一斉に写真やビデオを撮ったり、手を振り返したり、友人の名前が呼ばれると一斉に叫ぶ集団まで居ました。卒業生の数がそれほど多くないおかげで、全員の名前を読み上げても式は1時間半ほどですべて終わりました(トムによれば、お隣コロンバスのオハイオ州立大学 (Ohio State University) では学部生が7,000人、大学院生が3,000人とかになるのでフットボールスタジアムで式をやるそうです)。 式の最後に学長が「教官の方々、起立して下さい」「両親の方々、起立して下さい」「従兄弟とか叔父とか叔母とか姪とか甥とか親類の人みな、起立して下さい」「その他友人など今日の卒業生と特別な関係のある方、起立して下さい」と、最終的に今日の出席者全員を起立させ、「卒業生の諸君、これらの人々から受けた恵みを感謝し、これからも良い関係を継続させて下さい」と述べたのがとても印象的でした。 (「配偶者」が抜けていてトムが最後まで立てなかったのはおかしかったですが)
式が終わってトムに別れを告げてから、私はフラック教授とマットをしばらく探しましたが、ナターセンターの通路という通路があまりの人だかりなので、まもなくあきらめました。卒業生が皆出てきて、家族や友人と立ち話をしたり、花束をもらったり、写真を撮ったりしているのです(外は0°Cなので)。 私としては、ローブに身を包んだフラック教授の姿を写真に収められなかったのがとても残念なのですが...


